■「場」に参加できず / ネットワーカーとして活躍2
若造 お金というのも、まったく同じような性質を持っていて、タンス預金にしていたのではまったく増えないよね。銀行に預けるとか、株や債券を資本市場で買えば、利子を連れて戻きてくれるでしょう。
おやじ そういえばちょっとおつき合いで預金していた近所の信用金庫がつぶれそうになったんだけど、けしからんよな、オレが預けた金を他の会社に貸すなんて。「預けた金はちゃんと持っていろ」と言いたい!
若造 違うんだって。銀行の仕事は、集まったお金をリスクを取って他人に貸して利ザヤを稼ぐことなわけでしょう。自立した個人というのもまったく一緒で、自分が持ってるものを出し合って、市場で交換しながら、その価値を高め合っていくんだよ。
おやじ わらしべ長者みたいな話だな。
若造 市場というのは、その交換のための「場」であり、ネットワークというのも市場に似た機能を持っている。市場に店を出すのに、商品を並べなきゃ意味がないでしょう。だからわれわれは、自分の意見や自分の知識をオープンにしないと、市場に参加する資格はないということなんだよ。
おやじ 普通は自分の立場を表に出すのは恥ずかしいだろう? 「表沙汰」というのは避けたがるもんだが。
若造 自信のない商品を店に並べるんだったらね。でもそれなら、いい商品を並べられるように努力するか、店を片づければいいんじゃない。
おやじ 会社のいいところは、どんなまずい商品(労働力)を並べていても、買い上げてくれることだよ。うれしいねえ。
若造 ところが、最近は会社も懐具合が寂しくなったので、いい働きをする社員の労働力は高く買うけれど、「たいして働かない社員の労働力は買いたくない」と言い始めたみたいだよ。
おやじ だから「市場経済はいかん」と言ってるんだ!
若造 ネットワークは市場と同じで、基本的には出入り自由なんだけど、運営者がうまく運営しているネットワークの場合は、「場」に方向性を持たせて、なるべくよい参加者を選択するようにしているよね。上手な運営者は、そのネットワークに相応しくないの参加者を自然に排除しているんだよ。
それと市場に関してもうひとつ勘違いしてるみたいだけど、市場はみんながお互いを買い合うのであって、だれかが一方的に買ってくれるわけじゃないんだよ。純粋にギブ&テイクだからね。そして「参加者おのおのが、お互いに影響を及ぼし合っている」という関係があるんだ。