■インターネットになじめず / ネットで「無」から「有」をつくる3
おやじ しかしなあ、これはパソコンの話だろうが。パソコンというのは機械だろう。機械を電話線でつないで、何ができるというんだ?
若造 そこの認識を、根本的に変えなきゃだめだよ。
パソコンは機械でも、パソコンをいじっているのは人間で、その人間が持っている知識を今までにないほど幅広く、同時に共有できるようになったんだから。そしてその知識のやりとりの中から生まれてくるのが、これまでになかったような価値を持った「知」なんだよ。そしてその「知」が、利益を生み出す源泉なんだ。
さっきまで話していたネットワークをなぜやる必要があるのかというと、「知」を生み出し、そしてその「知」を実際にビジネスの形にするところまで持っていかなければ、新しい価値を生み出すことにはつながらないわけで、そこまで持っていくためにネットワークというのが大きな力を持つからなんだ。
すべての価値は人と人とのつながりから生まれる。コンピューターネットワークを活用すれば、無から有をつくることができるんだ。だから閉鎖的固定的な関係を捨てて、常に新しい人と出会うチャンスをつくっていかなきゃいけないんだ。
おやじ そんな錬金術みたいな話があるのかな。Eメールにしても、会社のグループウェアの情報システムにしても、オレは面白いと思ったことはないけどなぁ。
相手の顔が見えないんじゃ、コミュニケーションとは言えないんじゃないのか?
若造 反対じゃないの? 表情や声というのはすごく雄弁だから、それでごまかしている人が多いんだけど、Eメールに書けるのは相手に伝えるべき実質的な情報だけだから、その人の本当のビジネスセンスや仕事の能力が裸になっちゃうんだよ。
逆に受け取ったメールに関しても、受信者はそこから純粋な価値を判断する必要に迫られるから、相手のメンツや人情といった阻害要因が取り払われて、まっとうな損得勘定をすることができるんだよね。だから旧日本人にとっては、非常に適正な情報の評価を行うための最初のステップになるんじゃないかな。
おやじ ましてや、インターネットの匿名掲示板なんて、名前も肩書きも書かないんだろう。それじゃ、その情報をどう扱っていのか判断のしようがないじゃないか?
若造 だから、そこに書かれている情報だけで判断しなければならないんだよ。情報の発信源は、情報の確度の参考にはなるけれど、最終的には自分で判断しなければならないのは当然なわけで、旧日本人のように「上司が言ったことや会社が命じたことはすべて正しい」と、無条件に相手の肩書きや立場によって判断するのはおかしいでしょう。
ネットワークの中では、肩書きによって上下は決まらないけれど、情報力がある人や、情報をうまく交通整理して価値を高める編集能力がある人は、みんなから信用されているよね。そしてそういうネットワーク内での存在感のある人のところにどんどん情報が集まってくる。それはみんなが純粋にその人の実力を評価しているからなんだ。この世界では、権威というのは通用しないんだ。