■顧客よりまず自分 / 「利益相反」を避ける
おやじ そんな、会議の改革なんかやっている余裕なんかあるかよ。工場の閉鎖で働き場所がなくなった社員をどう活用するかで揉めに揉めてるのに。彼らができる商品を寄せ集めにつくって出すことに決まったんだけど、大変な仕事だぞ。
若造 だけどそれは、多分うまくいかないよね。だって、お客さんの都合よりも、自分たちの都合を考えて世に出す商品がうまくいった試しなんかあるわけないじゃないか。
旧日本人は、「自分たちさえよければいいんだ」という頭があるから、結局損をすることになるんだよ。
おやじ 仕方がないじゃないか。まず自分たちが食べるのが先だよ。きれいごとはそれからだ。
若造 談合をやっている連中の言い分はそうなんだ。「自分たちが食べるためには、談合は正当なことだ」と信じている。だけどもその結果は、結局、自分たちが将来負担すべき公的債務になってるんだけどね。
そういうタコ足的な矛盾に気がつかないのはなぜなんだろう?
旧日本人は、「利益相反」という概念が理解できない人が多いね。
おやじ なんだそれは?
若造 この前「マージャン仲間と香港にツアー旅行に行ったら、一日に五軒も土産物屋をたらい回しされた」って怒ってたでしょ。
おやじ 当たり前だろう! ツアー会社は客の味方なのか、土産物屋の味方なのか、どっちなんだよ一体! どうせツアー会社は土産物屋からリベートもらってるんだ。けしからんよな、まったく。
若造 だから、それと同じ「自分たちさえよければ客なんかどうでもいいんだ」を、仕事の上で平気でやっていないかと自問してごらんよ。
旧日本人の頭の中では、自分たちの利益になるのであれば、利益相反のどこに問題があるのかわからないないみたいだけど、それを延長すると、「自分たちの得になるのなら、どんなでたらめでもまかり通る」ということになってしまうね。それはまずい。そうじゃなくて、自分たちは顧客と株主の利益のために働いているのだということを再確認しないと。