■仕事とは会社に行くことだ / ビジネス・マインドを持つ
おやじ ビジネス・マインドっていったい何なんだ。
若造 ぼくも、はっきりとはわからないけど、絶対に持っていなければならないビジネスについての意識というのは、少なくとも三つあると思うな。
ひとつは自分がやっている仕事の本当の意味をきちんと認識していること。
もうひとつは、物事を損得ずくで考える経済的なセンスと、それを自分が持っている資源に結びつけて、資源の有効利用を考える経営センス。
もうひとつは、お客さんのことを慮る、「顧客志向」じゃないかな。
おやじ 自分の仕事についてわかってない人間というのはいないんじゃないかな?
若造 それは、旧日本人の場合は、「仕事とは毎日会社に行くことだ」と考えてる人が多いよね。それは完全なまちがいであるということだよ。
何度も繰り返しているけど、仕事とはまったく新しい付加価値をつけて、結果として利益に結びつけられなければならない。だから大企業の中の間接部門で働いていたとしても、自分の会社のビジネスモデルはどの部分で利益を出していて、自分の仕事はその流れの中でどこをサポートしているということを感覚的に把握してないとだめでしょう。
それともっと重要なのは、「自分がやってる仕事は給料に見合っているかどうか」を意識しておかないとね。ガムシャラに頑張ることは「仕事をした」という言い訳にならないわけで、ちゃんと儲けに貢献できているかどうかを考えるべきだ。汗をかいたこと自体は、何の言い訳にもならないんだよ。
おやじ そこまで深く考えている人は少ないだろうな。
若造 その次はもっと問題で、経済合理性、すなわち損得勘定をちゃんとしているか。人は損得で物事を判断しているかどうかというと、自分の財布からものを買うときは一円単位で厳しく商品を比較するくせに、会社の経費とか税金とか、他人の金をつかうという段になると、とたんにいい加減になっちゃう人が多いね。公共心がない、ということだろうか?
おやじ 「公」のお金は自分の金、自分の金は自分の金だからな。
若造 ところが、その自分の金ですら、まともに損得が計算できない人が多いね。
経済的に見て、理にかなっているかどうかの判断をするためには、学校で習うような経済的な原則を身につけてないとだめだ。例えばモノの値段というのは需要と供給によって決定されるわけだから、意図的に数を絞ってしまえば値段を高くすることができる。実用性から考えると異様に高い商品がよく売れるのであれば、それがひょっとすると社会全体のコスト構造を高くしているかも知れないよね。
おやじ なんだか難しい話だな。