■仕事とは会社に行くことだ / ビジネス・マインドを持つ2
若造 むつかしくないって。そういう感覚が身についてないと、結局損をすることになるんだよ。それと同じように旧日本人は、リスクについてもただただ恐れているだけでうまくつき合うことができないし、「公共事業が景気浮揚効果を持っている」と信じ込んだら、いつまでたってもなんとかのひとつ覚えみたいに日本中を開発して、もうこれ以上ダムも道路もつくるところがないくらいつくりまくっている。もし「限界効用逓減の法則」を知っていれば、公共事業の効果がだんだん薄くなることがわかるはずだね。
ビジネスで使える資源はだいたいトレードオフの関係になっているわけだし。テレビゲームは、このトレードオフ関係を実感するのには最適なツールなんだよ。シミュレーションゲームは特に経営センスを磨くのにいい。
おやじ そういえば、そんなややこしいことを昔大学の一般教養の講義で聞いたような気がするな。しかし学校で習ったことなんか、社会人になったら全部忘れたよ。
若造 そういうすごく簡単な経済原則を、学校で習って、「テストが終わったからもう忘れてもいい」というのではなく、感覚として自分の身につけていなければ、責任ある立場でまともな判断を行うことはできないよ。
経営というのは、まず目標を決めて、それを達成するために自分が使える資源をどのように集めたり組み替えたりするかということなんだから、どちらが得か損か判断するための経済原則を知っていなければ、できるはずがないことなんだ。旧日本型企業には、そういう「どちらの方向に走っていけばいいのか」もわからないし、「どうすれば一番速く走れるのか」も判断することができない、あまりにも無能な経営者や管理職がごまんといて、株主の資本と、若者たちの可能性を犠牲にして自分たちの地位を守り続けているんだ。かなわないよねまったく。
おやじ しかし、損得なんて時の運で決まることもあるんだから、そんなに騒がなくてもいいじゃないか。
若造 「人事を尽くして天命を待つ」というのなら話はわかるんだよ。初めからどうみても勝てるはずがないことをやっているのに「勝負は時の運」なんて言っても、頭がおかしいとしか思われないよね。そういう人に経営感覚があるとはとても思えないな。
最後に、あくまでもをお客さんの方を向いて仕事をするという「顧客志向」の考え方がないと、ビジネスはうまくいかないでしょう。これも当たり前すぎるほど当たり前のことで、まじめに仕事をしていれば、必ずお客さんのことを考えるはずだよね。それ以外のことを考えて仕事をするのは、明らかにまちがっている。「本当はこうした方がお客さんのためになるのに、それができないのはあの人が反対しているからだ」とか、「あの部署が言うこと聞いてくれないからだ」とか、そういう言い訳をして妥協的な仕事をしているのでは勝つことはできない。
おやじ そこがそう簡単にいかないところが、仕事の難しいところなんだよな。