特攻精神と「ジャパン・クール」は
底がつながっている
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 例えば今では、これまである種蔑視的な意味合いを持っていたマンガとかアニメとか、こういったものが、実は世界中の多くの人に受け入れられるベースを有した高い価値を持つものであると世界的に認められるようになっています。これを生み出す力も、日本文化の中に存在しているものでしょう。
逆に言うと、半島や中国がどんなに頑張っても、世界に受け入れられる作品がまれにできるかもしれないけれど、それは日本人の作るマンガとは違う傾向であるということでね。
飯坂 ただ、半島と中国を一緒にするのは乱暴で、火薬とか紙とかの原型は中国で発明されたとされているわけだし。突飛なことを考えた人が4000年の歴史の中でたくさんいて、いろいろなものを作り出してきたのでしょう。
運営者 人数が多いからできることでしょうね。
飯坂 それこそ大勢の人たちが、何百何千年間も中原で競って濃密な文化を作ってきたわけですから。
運営者 逐鹿やってたわけですからね。中国の人々が共有している文化は、相当に奥が深いといえるでしょう。
飯坂 昔の中国人はそうなんだけど、今の中国人はどうですかね。
運営者 でも僕がここで話している文化は、体制の変化にかかわりなく、そこの文化系に属している人たちが広く持っている物事に対する姿勢や考え方のことなんです。
だから共産中国の人間でも中国の文化を持っていると僕は思うんです。そして中国の今後の発展は、あれだけ大勢の人がいて、頭のいい人もたくさんいるからすごい成長を遂げるとは思うんだけど、しかし彼らが持っている文化に依存しているから、限界性はその文化の中にあるということなんです。
それを横に敷衍すると、僕は「日本人は今もう一度アングロサクソンと戦争しても、やっぱり負けることになるだろう」と思っているんです。
飯坂 んー。
運営者 それはちょっと飛躍しているから、もうちょっと砕いて話すと、さっき言った「日本文化は相手を慮る要素を持ってるということが日本社会のあり方を決定づけている大きな要素だ」と思うのですが、それはすなわち、自分よりも会社の利益を慮るとか、会社のことを「わが社」と表現して内輪意識を持つとか・・・つまり自分は使用人の立場ではなくて、参加意識という一種のオーナー意識を持っている人々がたくさん集まっている日本企業が大きな力を発揮してきたというのが、戦後日本の高度経済成長を支えた大きな要因であったということ。
これ、ほんとは全然おかしいんですけどね、それを正当化するために「人本主義」なんて修正的思想も出てくる。
またはその逆にバブルが起こり、その後始末の中で、日本全体が改革という大きな荒波にさらされたわけですが、改革に抵抗した守旧派の人たちは、組織や他人を慮る考え方の延長戦上で物事を考えていたと思うんです。身内意識に依拠して改革に反対したし、「やばくなったらともに堕ちていこう、地獄の底まで」という歪んだ美学を持っていた。
それは、大政翼賛・国家総動員体制の日本が持っていった自縛意識・特攻精神と相似形のものであって、日本人はそこから抜け出ていないというのが、「新日本人論」の中で言ってきたことだと思うんです。
つまり、それは良くも悪くも日本文化なんです。日本人は、自らの持つ文化に導かれてバブルを起こし、今では改革を否定しつつあるわけですけれども、それは「ジャパン・クール」として海外でアニメや漫画が受け入れられていることと同根なんですよ。
飯坂 それはそうだろうね。
運営者 それが、僕が今日言うところの「文化」なんです。おおざっぱな話ですが。