ルールに従う文化がないから
「いじめ」が起きる
インタビュアー 飯坂彰啓
飯坂 バブル崩壊がその結果であったかどうかは、いろいろな見方があると思うんだけど。
運営者 でも金利のコントロールや金融政策によってもたらされた部分も大きかったと思いますよ。
飯坂 バブル崩壊って、そこまで悪かな?
運営者 どういうことですか?
飯坂 だって、バブル崩壊で餓死者が出たというわけでなし。確かに不良債権が多数生まれて、国富が失われたのは確かかもしれないけれど、「不可避の調整であった」と見ることができるかもしれないし。
運営者 当局は、カタストロフィックな調整に追い込んだ責任を問われるべきだと思いますよ。バブル崩壊ではないソフトランディングの手法もあったのではないのか、そして政策当局はそれを目指すべきだったのではないのかと。
飯坂 彼らが言うように、自分たちが無謬であるのなら、それを目指してほしかったですね。
運営者 補足するならば、彼らは無謬であるがゆえに権力をほしいままにしてきたわけですから。
飯坂 「ほしいまま」とは言わないけれど、みんなが役所に従っていたわけだからね。
「無謬である」ということ以外に、日本には支配ロジックがないんだよね。恐ろしいことに。
運営者 それを違う角度でいうと、いじめがしょっちゅう問題になってるじゃないですか。
これ、なぜ日本でいじめが起きるかというと、ルールがないから、あるいは「ルールがあっても従わなくてもよい」と思っているからですよ。
もし「ルールにのみしたがって行動するべきである」とみんなが認識していれば、逸脱者がいても、「それはルール違反だ」といえば秩序が保たれるはずです。ところが子供の社会は人治主義だから、力のあるものが自分の意思を通すために、集団で弱者に対する強要をするわけです。それがいじめですよね。
だけどどこの国では、ルールが通用しないのは子供の社会だけではない、ということが問題なんです。
飯坂 そうですよね。
飯坂 日本には一応、成文法があるけれど、それは人々の感覚にマッチしていないからね。「そんなの関係ねえ」という話で。
運営者 下々が、「社長をこれは違法行為です」といっても、「理屈を言うな、これはこういうふうに昔からなっているんだから、法律よりもそっちの方が正しいんだ。法律は現実と辻褄を合わせて運用して、はじめて活きるんだ」と。
飯坂 「何を青臭い理屈を言っているんだ」と。
運営者 東大法学部を出た連中が、一番遵法意識が低くて始末が悪いんです。「自分が一番法律に通じている」という自負があるから、平気で法律を曲げてしまいますからね。これは明治国家以来の日本の組織の通弊でしょう。だってそういいながら連中が従っているのは、古くさい旧套なんですから。「それを守るのが自分の責務」という意識があって、それによって法律を曲げても悪いこととは感じないんです。むしろ原理原則を遠そうとする人間を憎み、自分の方に正統性があると錯覚してしまう。