パラダイムシフトは予見できた
インタビュアー 飯坂彰啓
飯坂 あの頃、バブル崩壊は当然として、その前に80年代の円高不況、プラザ合意のあたりに起こったこととして、大企業が直接金融で資金を調達できるようになってきて、銀行から金を借りなくてもすむような体制になってきたよね。
それで大企業への融資が細ってきたところで、不動産への融資に振り向けたことでバブルが起こったわけで、バブル崩壊というのはそうした流れの最終局面にすぎないわけです。その前に、十数年間の積み重ねがあったということ。
運営者 たぶん日本文化がそれまで孜々営々として築いてきた、中央集権・国家総動員体制で、この貧乏な国があれだけの軍備を整え、軍艦を持ち、何百万人も外国に派兵できるようになって、それが戦争に負けて灰燼に帰してしまって、そこからまた不死鳥のごとくよみがえって高度経済成長をやって・・・という流れがあったわけですが、その原動力となった社会的な構造が、この先は用をなさなくなるパラダイムシフトが起きるということを、われわれは91年の段階で理解していたということです。
逆にどのくらい同世代の人間がそれに気がついていたのかということを僕は知りたいですよね。1950年代60年代の学生が、左と右のイデオロギー対立の図式さえ整理できれば安心できたという状況、それがいったん終息して、その後僕らの目の前に突きつけられたものはなにかということを、僕らはその時知っていたわけです。
飯坂 1950年代当時は、左のほうがエマージングだったんだけど、われわれにはそういう感覚はないよね。
運営者 アメージングでもあったかもしれないと思いますけどね(笑)。チャーチルは「25歳までにリベラルに傾倒しない者は情熱が足りない。35歳になって保守主義者でない者は知能が足りない」と言ったとか、言わないとか。
飯坂 70年安保の後、その流れはわけがわからなくなってしまったでしょう。それで「ニューミュージック」のような後ろ向きな音楽がはやったわけで。「あなたはもう忘れたかしら」とか。
運営者 「オラは死んじまっただ」とか、「人間なんてららーらーららららーらー」ですからね。後ろ向きです。
飯坂 そういった政治状況の中でわれわれは物心がついたわけで。でもそういった曲を聴いていたから、ある程度物事を懐疑的に眺めることができるかもしれないな、なんて思ったりしてね。
そうしたリセットがあった後で、ユーミンだの田中康夫だのが出てきて「プチブル万歳」になったわけで。
運営者 でもその背後で、じりじりじりじり歯車として動いていたのが、僕が最初からお話している日本人の持っている日本文化なんですよ。