バブル・暴走・不正 から改革へ
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 まあそれは置いておいて、日本が貧しいのか豊かなのかわからないうちに、日本人はバブル経済に突入していったわけです。さすがにバブル以後、「日本はまだまだ貧しい」と主張し続けている人はいないんじゃないですかね。
飯坂 国民の大多数が、あの時バブルを実感できていると言えるということは、結構すごいことだと思うよね。
「うちは地方だったから、バブルはなかったんだよね」なんて話は聞かないじゃない。バブルには地域格差は当然あったと思うけど、それなりにみんなバブルを享受していたということでしょう。そのへんが今回の景気回復とは少し違うかな。
運営者 あの頃ですよ、新幹線の駅前が、全国みんな同じになっちゃったのは。サラ金ができてパチンコ屋ができて吉牛ができて、リクルートのビルが建って・・・英会話学校はその後ですけどね。「なんじゃこりゃ」と。とってもつまらないなという違和感を持ちましたよね。
つまりバブルとは、資本的に一極集中している日本が、さらに新幹線を延長することによって均一化する過程であったようにしか見えません。
飯坂 みんながそれを望んだからだよね。
運営者 今でもそれを望んでるみたいですけどね。
それで、92年当時にわれわれにはパラダイムシフトの予感があったわけですが、その後日本の経済社会には、実際パラダイムシフトに沿う形で、いくつかの変革があったと思うんです。
ひとつは、霞ヶ関においては省庁再編や行政改革、規制改革、組織だけでなく仕事のやり方も変わってきてるということがあると思います。
役人が無謬主義を貫くことによって勝手放題をやった結果、必要のない公共事業や公共建築が日本中にできてしまった。「この流れは止めなければならない。暴走する役所や天下り法人の暴走を止めるためには、元を断たなければならない」という大きな流れが改革としてあるわけです。蛮勇を振るってこれをやったのが、小泉改革ですね。
飯坂 はい。
運営者 もうひとつは、企業も変わり始めた。例えばバブル当時は、上場企業でも単体決算だったので、子会社を使った粉飾は当たり前のことでした。
飯坂 いみじくも、事務所経費の不正経理がばれた渡部恒三黄門様が、「10年前は不正経理なんて当たり前だった」と述べてました。どういう意図でああいうコメントをしたのかわからないけれど。まあ地元向けかもしれないなぁ。選挙民たちは、「そうだ、昔はみんなそうだったんだ。黄門さまは悪くない」と思うのかな。
運営者 それは、本心からだと思いますよ。悪いことをしているとは思っていないでしょう。
日本企業も10年前は当たり前に、決算に響くようなヤバイものが出たら、当たり前のように子会社に買わせたり、帳簿に載せ替えたりして本体の利益を出して帳尻を合わせていたわけです。
当時の5大都市銀行の株価は、10円単位で同じだったわけですから。これが資本主義といえますかね。その後で、いくつかの銀行は額面を割ったわけですが。そこまで堕ちないと分からないわけですよ、あの連中は。
飯坂 例えば転換社債は、株価が高いにもかかわらず割安で放置されていて、大儲けのチャンスが転がっていました。