社会保険庁横領 なぜ裏切り者を訴えないのか
インタビュアー 飯坂彰啓
飯坂 でもさっきの話だと、「ウソをつかないのは日本人の美徳」じゃなかったっけ?
運営者 外国人に対してはウソはつかないんです。利害関係がないですからね。みんな日本に来たガイジンは大切にするでしょ。
でも自分が属する組織を守るためにはウソをついても問題はないんです。カルト教団に属している人たちの考え方とまったく同じですよ。この前長野の新興宗教で集団リンチによる殺人事件があったのですが、被害者の親が「自宅で死んだことにしましょう」と、教団のために自分の娘の死を隠そうとしていましたからね。それくらいのことは平気なんです。
あるいは会社のために飛び降り自殺する人までいたんだから。
飯坂 それは組織にとってはウソじゃないんでね。
運営者 そうです、どうしてかというと、日本の文化では、組織の秩序を守るために、仲間を守ることに高い価値が与えられているからです。
飯坂 組織の中が「世界」ということになって、「組織を守るために言うことはウソではない」ということだ。
運営者 世界の中にある特殊な利益集団、それが「組織」です。日本の組織は普遍的な世界(社会)にとって異物であり、世界とは利益を異にしています。組織の利益は、組織の成員のみが享受するもの。つまり日本の組織は「私益集団」なんです。
去年、舛添厚生大臣と地方自治体の首長がけんかしていて、舛添さんは「なぜ不正を働いた社会保険庁の職員を刑事訴追しないのか」と言っていることに対して、地方自治体側は、「そんなことはできない。厚生労働大臣は不人情である」と反発していました。
ここには何か独特なものがありますよね。惻隠の情とは言いませんが、独特な文化的な背景を感じます。
「士気が下がる」って、ヘソで茶が沸きますよ。役人の士気なんか上がらない方が国民にとって得なんですから。
飯坂 お前ら「士」か? と。
運営者 (爆) 違うだろうと。
「士」は業務上横領はしませんよね。そういう連中が同じ職場にいることも嫌がるだろうし、仲間からそういう人間が出たら率先して訴えるべきだと考えるのではないでしょうか。公務員には、刑訴法の告発義務があるんですから。
社保庁職員は、40年間ずっと社会保険庁に勤めて、一貫してやってきたのは年金のごまかしですよ。そんな恥ずかしい人生があっていいのか。ほとんど人権侵害だと私は思いますね。だからその状況を変えようと立ち上がらなければ、「士」とは言えませんよ。
まあ、入所した当初からずーっとごまかしをやり続けていれば、「こんなもんか」と思ってしまうかもしれないけれど。すごい組織だ。それって犯罪集団ですよ。別ページで紹介している仙波さんのケースでは、警察もそうなんです。若い時に領収書偽造に手を染めて、「こんなもんか」でみんなが税金を横領しちゃう。
飯坂 社保庁の場合は、もしかしたら犯意がなかったかもしれないというところが恐ろしいね。
「前借りしただけなんだよ。返すつもりがあったんだけど、だれに返したらいいのか分からなくなったんだ」とかね。
自治体が職員を刑事訴追したとしても、そこの選挙民はどう思うかというと、「よくやった」とは思わなくて、「地元の恥をさらしやがって」とか、「よくも身内をお縄付きにしやがって」と思うわけですから、次の選挙に不利だよね。
運営者 それは、地域社会の人たちが、不正を行った人間も含めて、「自分の一部だ」と思っているからですよ。
ホントは不正を働いた裏切り者なのに。