キリスト教vsイスラム教は
唯一神教同士の内ゲバ
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 そして、内部が中空だから、外国のものを何でも受け容れることができたんです。だから中国からの思想をスムーズに受け容れることができたし、キリスト教もOKだったし、アメリカの流儀だってOKだったし。
飯坂 カウンター・カルチャーだから。
だからイラク人が「ヤンキー・ゴー・ホーム」と言っているのは当然なんですよ。日本はそこでアメリカを受け容れることによって繁栄を手に入れたわけで、イラクでも同じように事が進むと思っている。
運営者 イラクが、というかイスラムが日本のように中空構造だと思ったら大きな間違いですよね。
イスラムは、中味が詰まっているわけですよ。
飯坂 キリスト教よりも強烈ですからね。
運営者 イスラムに言わせれば「キリスト教なんかいい加減な宗教だ」ということになるでしょう。イスラムは絶対唯一の神を信じているのに、キリスト教はもともと同じ神でありながら、マリアやキリストも信じているし。「何だあの、マリアってのは」ってなもんですよ。
飯坂 マリアは、全世界共通の観音様信仰のようなものですね。
運営者 マリア信仰は、ローマ時代にミトラ教から取り込んだものです、クリスマスと一緒に。林道義さんがユングの本でおもしろいことを書いていて、ユングによれば、 「原型」イメージとして、「父親が神様として、母親が人間」というパターンにすることが必要だったと言うんですね。唯一神は「荒ぶる神」ですが、その対置イメージとしてバランスをとるためにも母性が必要であると。だからマリアの存在が要請されたというんですね。
イスラム教にしてみれば、マホメットだって神ではない。予言者ですから。
キリストだって最初は預言者だったのに。アタナシウス派以降のキリスト教では三位一体で、キリストだって神だと言う。そんなもの、イスラム教に言わせれば「ざけるな」という話ですよ。彼らにしてみれば、神というのは「ヤーヴェ」とユダヤ人が言っているものしかないわけですよ。それ以外のものは、神ではないじゃないですか、「絶対唯一」なんだから。
ところが、キリスト教ではそうではない。かつ教会の世俗に対する介入すら認めているキリスト教などというものは、イスラム教にとっては邪教以外の何物でもないわけですよ。
だから、キリスト教vsイスラム教というのは、唯一神宗教同士の内ゲバであって、これは決して相いれるものではないでしょうね。イラクの戦後統治はたいへんですよ。
しかし、日本人が持っている精神構造というのは、中国や半島の人が持っている精神構造よりもかなり中空的で、許容性が広いものだと思うんです。
ですからアメリカによる日本の戦後占領がうまくいったのも、こういった日本人独特の共同体的な支配構造・精神構造に原因があるのではないかと僕は思うんです。