国体もわからず、
計画性も組織性も責任もなかった
インタビュアー 飯坂彰啓
運営者 以下は、武藤章が軍務局の役割を極東軍事法廷で述べた言葉と、それに対する丸山のコメント。
「陸軍大臣は閣議で実行した事項を実行せねばなりません。これがためには政治的事務機関が必要であります。軍務局はまさしくこの政治的事務を担当する機関であります。軍務局のなすのは、この政治的事務でありまして、政治自体ではないのです」
「これが武藤の軍務局長としてのめざましい政治的活躍の正当化の根拠である。彼の仕事は政治的事務なるが故に政治に容喙しうるのであり、政治的事務なるが故に政治的責任を解除されたのであった」(軍国主義者の精神形態)
「皇軍の精神は皇道を宣揚し国徳を布昭するにある。すなわち1つの弾丸にも皇道がこもっており、・・・皇道、国徳に反するものあらば、この弾丸・・・で注射する」(荒木貞夫)。
これが軍隊の目的かい? これでは負けますわな。でもこれを21世紀になってもまだ続けている人のいかに多いことか。
で、計画性も組織性もないままに戦争に突入していったんですね。でもこれって、今の日本企業のミドルがやっていることそのままじゃないですか。
それから、こういうのがありますよ。1945年の8月に入って「ポツダム宣言を受諾するかどうか」という議論をしていたわけですが、その最終的な守るべき対象は、「国体の護持」であるということでみんな一致しているわけです。
けれど、では「国体とは一体何なのか」ということに関しては、各人各様考え方がぱらぱらなので、最後まで国体とはいったい何なのかということをだれも知らなかったということがあるんです。
国体の定義は最後までわからなかった。だけど日本人は「国体の護持」と言われると、「ああ、国体を護持しなければならないんだな」と何となく納得するということです。しかしではその国体とは何なのかということを、要素分解して「これとこれついては守ってください」ということを連合国側に説明できるかというと、だれもできなかったわけですね。その議論を、8月14日の段階になっても延々とやっていたんです。