「不況克服のため何でもする」が国民のコンセンサスだった 藤原正彦先生論文「国家の堕落」を読む
読書仲間 飯坂彰啓
運営者 さらに先に進むと、わが国は建国以来海外で戦ったのが日清戦争以前は2回だけという「世界でも稀にみる平和愛好国家である」と書かれています。これをGHQや日教組は忘れているらしいんですね。でも、平和が大好きなのは共産党とか社民党とか、憲法9条大好きな市民グループの皆さんたちなわけで、藤原先生はそういう人たちのことをどう考えていらっしゃるんでしょうかね?
飯坂 いや、彼ら平和主義者が嫌いなのは、日本政府が行使する武力や権力についてであって、プロレタリア独裁の政府の行使する暴力や権力には大賛成なわけですから。いま平和主義で、「9条を守って戦争するな」と言っている人たちは、「今の政府が強くなりすぎると自分たちが権力を握れなくなるから戦争するな」と言っているだけだな。
運営者 革命の思想なわけですね。
この平和国家というのは、藤原先生のこの後の話からすると、日本は安心して静かに暮らせる国であったということが大切らしいんですよ。ところが市場原理主義を入れると生き馬の目を抜く社会になってしまうと。そういうところが平和愛好国家であるところの国柄を忘れているということらしいんです。
飯坂 なるほど。古くから民のかまどに煙がのぼり、下々にいたるまで衣食足りて礼節を知る、というようなことですかな。
運営者 そして先生は、そうした平和愛好国家であったにもかかわらずアメリカが戦後の日本人を、お前らは一方的に戦争を起こした国だと洗脳してしまったのだと主張されています。
飯坂 要は、東京裁判史観というのはけしからんということだな。
遊就館なんてものも、広く知られてしまうとアメリカ人や中国人が訪ねてくるようになって展示内容を変更しなければならなくなってしまったと。
運営者 やっぱり遊就館みたいなものは、好事家の間の楽しみとしてひっそりと行われているのがよかったんでしょう。
そしてここ10年あまりの改革ブームについて、「不況克服のためなら何でもしよう、というのが国民のコンセンサスであった」と書かれています。
そんなにコンセンサスがありましたかねえ。守旧派の皆さんがかなりひどい妨害や抵抗をして、改革派の足をさんざん引っ張っていたようにも思うのですが。竹中さんが自民党の部会でどんなひどい目に遭ったかは、あの人が参院選に出たということだけでもわかりますよ。「学者は世間が狭い」とか、さんざんいじめられましたからね。コンセンサスがあるのにいじめられますかね?
飯坂 「不況克服のためなら何でも」と言いますが、それはそれ以前に橋本・小渕両内閣がやった不況克服のための景気対策のことを言ってるんですか?
運営者 130兆円もムダにつぎ込んだわけですが。この辺が小泉以前の政策を指しているのか、小泉政策を指しているのかよくわかりませんね。