市場原理主義者は本質が掴めないままアメリカを真似た 藤原正彦先生論文「国家の堕落」を読む
読書仲間 飯坂彰啓
運営者 先に行きますと、市場原理主義者は「本質が掴めないまま、とりあえずは経済好調のアメリカを真似よう、ということで日本のアメリカ化がすさまじい勢いで進行した」と書かれています。
果たしてそうなんでしょうか? 本質がつかめなかったのではなくて、本質をつかんだからアメリカに学んだのではないでしょうか。つまり市場主義というのは必然であるという、市場主義史観に基づいて改革をやっていたんだと僕は思うんですけれど。
飯坂 当然でしょう。
小泉改革は、単にバブル崩壊後の不況の克服のためなのではなく、経済のグローバル化やBRICsの台頭といった外部環境の激変に機敏に対応していくことであったわけで、そのひとつの政策が市場主義であったと。
小泉改革が不況克服だと思い込んでいた人たちこそ、本質をつかんでいなかったのではないですか。彼らは「騙された」というかもしれないけれどね。
もうひとつのやり方としては、改革なんかやらずに鎖国してしまうというやり方もあったのかもしれません。
運営者 それは当然ひとつのやり方としてあったでしょうね。北朝鮮みたいに現実にやってる国はあるわけですから。アメリカをまねるのが見苦しいのであれば、品格が必要なのであれば、品格をそれでも守れるのであればそういう手もあったでしょう。
飯坂 「武士は食わねど高楊枝」というわけですね。
運営者 まあぼくは、まだ藤原先生のおっしゃっている品格の意味がよくわかっていないので、どちらがいいのかはよくわからないのですが。でも日本が鎖国していた昔は、品格を保ちつつ、「武士は食わねど高楊枝」ということでやっていて、我慢に我慢を重ねることで、さすがの家康が築いた磐石の支配体制も270年で崩壊してしまったのですが。
話を戻しますが、小泉政権が本質をつかんで改革していたかどうかということに関しては、僕は本質をつかんで市場原理主義の導入をやっていたと思いますよ。
飯坂 当然そうなんだけど、市場原理主義の導入によって不利益を被る人や、わけがわかってやっているのかどうかを判断することができない人たちは、「そんなのは本質をつかまずにやってるに違いない」と言いがちですよね。
運営者 そうおっしゃっている方々が小泉時代には散見されたように記憶していますね。だけどまあたぶん、藤原先生は守旧派じゃないと思いますから。
飯坂 もちろんです、「本質」をつかんでいらっしゃるわけですから。
運営者 だから、この後を読み進めれば、本質とは何かが見えてくるはずなんですよ。
さらに、「内政干渉といってよいアメリカの要求を次々に呑み、規制撤廃、官から民へ、小さな政府、株主中心主義、新会計基準、BIS規制、郵政改革など、歴史的誤りとなりそうな改革が、十分吟味を経ないまま強引に導入された」と。
飯坂 BIS規制は日本が自分でやってるんじゃないんだけど・・・。
運営者 「歴史的誤りとなりそうな」というから大変なものです。藤原先生はきっと超歴史的な視点をお持ちなんです。
飯坂 株主中心主義がいやなんだったら、上場廃止するか、いっそ株式会社なんかやめてしまえという話だよね。
運営者 さようです。藤原先生もそうお考えかも知れませんよ。