国の借金は小泉政権の下だけで約50兆円も増加した 藤原正彦先生論文「国家の堕落」を読む
読書仲間 飯坂彰啓
運営者 次に先生は、「これらはすべて、市場原理=自由競争=規制撤廃=官から民へ、の教義の下で実行された」。その結果としての金融機関の破たんや失業者の増加、「国の借金は小泉政権の下だけで約50兆円も増加した」と書いています。
こんな市場原理主義はけしからんと、藤原先生は高邁な理念の下におっしゃっているのです。
飯坂 大手金融機関がバタバタつぶれたのは、小泉政権以前だったはずですが。
運営者 97年の後半ですから小泉さんと関係がなさそうな気がしますね。それに失業者が増加したのは、金融機関が貸し剥がしをしたからだと思うし、国の借金が小泉政権下で増加したのは国債費の増加による部分が多いわけで、それはそれ以前の政治家の皆さんが作った借金のために増えていったわけですけど。
飯坂 ちょっと「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という感じもしますね。
運営者 いやいや、何をおっしゃいますか、品格を口にしておられる藤原先生が、そのようなゆがんだものの見方をされるはずは決してないと僕は信じています。
飯坂 なるほどー。
運営者 次に先生は、「そのうえ、市場原理は必然的に格差を大きくする」と書かれています。
これはね、正しいと思うんですよ。問題は、「格差」というのは何かということです。格差社会っていうのはね、国で言うとどういう国かというと、中国とかロシアのような国のことを言うんです。中国なんて人口の5%の人間が国富の8割を持っているわけです。そろそろ共産革命が起こってもおかしくないレベルだと思いますね(笑)。
これこそ格差社会であって、日本は到底まだ格差社会とは言えないと思うんですけれど。
飯坂 中国の場合は結局、富裕層がいて中間層がいて労働者層がいて、その下がさらに凄くたくさんいるわけでしょう。
運営者 内陸部にいる農民ですね。そしてものすごい格差ができています。市場主義は必然的に格差を大きくするという事実は、市場原理を導入したこの2つの国の現実を見ていれば分かるのですが、逆に言うとこれは、まだまだ日本では市場原理が十分に働いていないのではないかという証拠だと僕は思うんですね。
飯坂 その部分で日本に余裕があるから、特定アジア諸国から日本にたくさん労働力が流入してくるんですよ。
運営者 東京都内のコンビニにしても飲食店にしても、働いてるのは全部中国人ですよ。この状況を、国柄を大切にしている藤原先生は一体どう思っているのでしょうか。
そば屋に行って、中国人のお姉ちゃんたちが中国語でぺちゃくちゃしゃべっている横で日本そば食いたくないってんですよ。とってもイヤな思いをしますよ。
僕は日本人に生まれて一番よかったと思うのは、わさびが食べられることだと思うんです。わさびを入れながら蕎麦をすする、「はー、なんて日本的な」と悦に入ってたら、側で中国人の女の子たちが中国語でうるさく騒いでいるわけですよ。なぜそんなことが起こっているのかと、つまりこれは「日本の社会に質的な変化が起こっているからなのだ」ということを考えなければならないと思うんです。まあそれはちょっと置いておいて。
飯坂 次に進みましょう。