国柄をひとつでも壊す時は、日本の叡智を結集すべし 藤原正彦先生論文「国家の堕落」を読む
読書仲間 飯坂彰啓
運営者 次に先生は、「多様な考えを持つ者の公正なる審議によってではなく、市場原理を新興宗教のごとく狂信する少数の集団が、内閣府官僚と組んで日本を思うままに改造してきたのである」と書かれています。
これをひっくり返せば、委員会に「多様な考えを持つ者」がいて公正な審議をしていればまた違った結果になっただろうということなんでしょうね。どういう人が委員に相応しいのかなぁ?
やっぱり月並みですが、左巻きグループの皆さんとか、宗教関係者とか、ノイジー・マイノリティーを入れろということなんでしょうかね。
飯坂 タウンミーティングで、主催者側が制止しなければタウンミーティングを占拠してしまいかねないような人たちのことなのかなぁ。
運営者 その答えを藤原先生はこう述べています。「もし国家改造という大それた仕事に取りかかるなら、それに見合った、日本の叡智を結集しなければならない」。
日本の叡智だそうですよ・・・。
飯坂 日本の叡智ですか。
運営者 さらに乗ってきた藤原先生はこう続けられています。「とりわけ日本には、他国に見られない特殊な伝統や美風といった国柄が豊富にある」
つまり日本以外の他の国なんてのは、平均的で、のっぺりして、特徴のないものなんですよ。藤原先生は海外生活が長いのでよくご存じなんです。なんて素晴らしい観察眼なんだ。私はこのような視点は持ち合わせていませんよ。ここはわれわれは、真摯に反省しなければならないかもしれませんよ。
飯坂 (深いため息) われわれは日本に住んでいるから、他国に見られない特殊な伝統や美風をちゃんと認識していないわけですね・・・。
運営者 ええ、そういうのを「日本の叡智」だったらちゃんと知ってるわけですよ(笑)。
飯坂 そういう特殊な伝統や美風を十分にわきまえている人たちを委員として結集しなければならないわけですね。
運営者 そうです。そして「国柄をひとつでも壊す時は、バランスの崩れに細心の注意を払わねばならない」。
いいですか、ひとつでもですよ、そのなんだかわからない国柄を崩すときには、バランスの崩れに細心の注意を・・・。
飯坂 国柄って何なの? 談合体質みたいなもの?
運営者 談合はれっきとした日本独特の特殊な伝統や美風ですよ。談合をやることによってみんな穏やかな心で生きていけるわけですから(笑)。
それで「バランスの崩れに細心の注意を払う」というやり方では、談合を壊せないわけだから、結局突き詰めると何事も変革することはできないということになっちゃいますよね。
飯坂 いや、そんなことはないですよ。バランスが崩れないように、他の餌をあげればいいということじゃないですか。
運営者 激変緩和措置というやつですね。
飯坂 あるいは対策費とも言う。それから裏金にしたって、あれも日本の特殊な伝統や美風なんですよ。そういうものを崩す時には、細心の注意が必要なんです。
運営者 そうすると、ここのところ地方の談合を摘発している検察というのは・・・。
飯坂 もちろん細心の注意を払ってやってるんです、検察なんだから(笑)。一方で、額に汗して働くという日本の伝統や美風に悪影響を及ぼすホリエモンのような存在は、これまた細心の注意を払って排除するわけです。
運営者 それは極めて適切な観察かもしれませんね。つまり検察とか公取委のような感じで改革を行えばいいということなのかな。
飯坂 だから検察のような細心の注意を払わず、日本の叡智でも特定の役人でもない人間が改革を行うのは許されないということなのでしょう。
運営者 なるほどそういうことだったのか、深いですね~。