イギリスより経済面で優れている日本に英語教育など不要 藤原正彦先生論文「国家の堕落」を読む
読書仲間 飯坂彰啓
運営者 そしていかに英語教育が不要であるかを示す動かぬ証拠としてこう書かれています、
「世界でもっとも英語の上手なイギリスの経済は戦後ずっと、世界でもっとも英語の下手な日本の経済とは比べものにならない程度のものであった。英語と経済に関係はない、たとえあるとしても無視しうるほどわずか、という動かぬ証拠である」(爆)。
飯坂 動かぬ証拠・・・って、この文章、全部おかしくないですか? 「戦後ずっと比べものにならない」って、そんなアホな。確かに日本のほうが成長率は高かったけど発射台も低かったから、追いついたのはポンド危機の60年代後半以降でしょう。
だいたい日本人はこんなたわごとをいっている場合じゃないんです。2005年の一人あたりGDPはOECD30カ国中14位で、イギリスに再逆転されてしまっているんですけど。
運営者 いやいや、藤原先生がそうおっしゃってるんだから、きっと動かぬ証拠なんです。英語なんかやらなくても経済運営や企業経営はやっていけるし、英語なんか勉強しなくても関係ないということです。
ええと、腹が痛いんだけど、イギリスというのは世界で一番英語が上手なんですかね? なにが「英語が上手」という意味なんだろう?
飯坂 「世界で一番中華料理を作るのがうまい中国は」とか言ってるようなもんだね。確かに早期英語教育には疑問点も多いけれど、こんな議論はないでしょう。
だいたい藤原先生は、経済至上主義じゃなかったはずじゃないですか。
運営者 論文もいよいよクライマックスにさしかかってきたので、ここまで来ると経済はうまくいかなければならないらしいんですよ、英語がうまい以上は。おそらく付帯条件がつくんですよ、経済は「たかが経済」だし国柄の本筋には関係ないんだけれど、もし英語がうまいのであれば経済は成長しなければならないということなんじゃないですか。
あともうひとつ気になるのが、イギリスは経済のシステムについての制度設計をしているわけで、それらは彼らの現在そして今後の収益源になるものなんです。そうしたところを考えるとイギリスは端倪すべからざる力を持っていると考えるべきでしょう。経済的にみてもそんなに過小評価していいものかと思うのですが。
飯坂 そうですね。
運営者 そして先生は、英語なんかやるくらいだったら、「そのエネルギーがあったら、翻訳でいいから東西の古典や名作をふんだんに読んだ方がはるかによい」と断言していらっしゃいます。確かに東西の古典や名作を読むのは結構なことですよ。それは認めますよ、間違いない。
飯坂 そりゃそうだ。日本は翻訳で東西の古典を読むことができる恵まれた国であるわけだから。
運営者 この環境をつくるためには、明治時代に翻訳語を一所懸命作った先人の苦労があるわけですよ。例えばソサイエティーを「社会」と訳したとか、「自由」とか。
飯坂 「経済」だってそうですよ。わざわざ漢字で熟語を作ってまで。
運営者 リパブリックという言葉を「共和」と訳して、それをちゃんと今は中国が国名として使ってるじゃないですか・・・ちょっとイヤミが過ぎますかね(笑)。
いずれにせよ藤原先生は、日本人の誰かが最初に英語の概念を日本語に翻訳してくれたということを忘れていらっしゃるんじゃないですかね、英語なんかできなくてもどうでもいいとおっしゃってるわけですから。でもそこは中国人が言うように、井戸水を飲むときにはその井戸を掘った人に感謝するべきだと僕は思うんだけど、そんなこと考えなくても品格は保てると先生はお考えなんでしょうかね?
飯坂 いや、そうは言ってないかも。英語が日本語に翻訳されているということは前提として当たり前のことなので、わざわざ触れるまでもない。日本の美徳によって水のように元からあるものだからという感じなのでは。
運営者 松下幸之助が水道哲学で家電を水のように作ったら、その製品はタダでもらってもいいんだというような考え方じゃないですか。それじゃ松下電器は成り立たないでしょう。