短兵急に実施を迫る経済人のいつもの流儀 藤原正彦先生論文「国家の堕落」を読む
読書仲間 飯坂彰啓
運営者 ま、とにかく、藤原先生に言わせれば、学校に格差がつくことはとんでもないことらしいです。富裕層は上位校のそばに引っ越すだろうし、下位の学校は低所得者層の地域の中に取り残されて校長のなり手もいなくなるだろうと。
「これを実施したら、義務教育が混乱するだろうことは火を見るより明らかなのだが」と。
でも、今の義務教育も混乱しているんじゃないですかね。少なくとも教育レベルが下がったという現実は直視すべきだと僕は思いますけどね。
今年上級試験を通って霞ヶ関に入ってきた新人の中でいよいよ、日本がアメリカと戦争したことを知らなかった人が出てきたそうですよ。
飯坂 60年も前の話だからねえー。
運営者 だけど、日本とアメリカの安全保障関係があるのはなぜかを理解するためには、われわれが戦争したということをとらえないとまずいんじゃないでしょうか。
飯坂 例えば中国人は、ほんの4,50年前に大飢饉があったことをみんな知らないし。
運営者 だって大躍進政策の失敗こそ中国で教えちゃいけないことじゃないですか。中国じゃ反日教育は盛んでも、徹底的にそうした話は隠されているわけですから。
じゃあ藤原先生はどうすればよいと考えておられるか、「ダメ教師も多いことは確かであり、そのような教師を淘汰せねばならないのも確かである。ただそのためには硬軟取り混ぜいくつもの方法がある。その中のどれがいま最も適切か、ということは高度の判断を要する問題である」。そりゃそうでしょう。
飯坂 「そのうちのひとつの方法に気付いたというだけで、はしゃぐばかりか妥協を許さぬ主張をなし、短兵急に実施を迫る、というのが経済人のいつもの流儀である」。断定してますな。
運営者 確かにね、「他にも方法があるかを検討したのかどうか」と問い詰められると、改革派の人たちも困ったかもしれませんね。
飯坂 だったら他の方法も試してみればいいじゃないですか。
運営者 ところが藤原先生は、いくつもの方法を試してはならないと後で書かれているんです。
そこに行く前に、オリックスの宮内氏が医療の自由化について、規制改革会議を自分の商売に利用しているとのうわさが絶えない。それが事実なのか事実無根なのか「たいした興味もない」と言いながら、やけに詳しくご存じの上で攻撃されています。
また規制改革の失敗のケースとして、タクシー事業の規制緩和でタクシー運転手が低賃金にあえいでいることや、福知山線の事故の一因が車体重量の規制緩和であったこと、大店法の撤廃によって地方の駅前商店街のシャッター通り化が進んだことなどが指摘されています。
こうした規制緩和については、いろいろ議論があるし、「ケース・バイ・ケースである」と結論づけられています。これ私もアグリーなんですよ。
飯坂 なるほど。