市場主義教育のため、子供らは取り返しのつかぬ損害を被る 藤原正彦先生論文「国家の堕落」を読む
読書仲間 飯坂彰啓
運営者 さて、問題がこれです、「やり直しが利かないのは教育の分野である」。
つまり飯坂さんがさっき言ったように、バウチャーでだめだったら、他のやり方を試せばよいじゃないかというのはだめだということです。教育はやり直しがきかない。もしも英語ばっかり教えるという自治体や学校が出てきたら、そんな子供はおそらく一生を漢字をかけないだろうと書いておられます。そして「釣り銭勘定のできない日本人が続出するだろう」と。
飯坂 でももうそれに近い事例は今出てるじゃないですか、ゆとり教育の結果として。
運営者 たしかに、ゆとり世代の彼らは一生漢字を書けないかもしれませんね。でも藤原先生はそちらには目を向けずに、「市場原理至上主義=消費者中心主義に蹂躙された教育のため、子供たちは生涯取り返しのつかない損害を被るのである」と力説されておられます。
でも僕がもうひとつ思うのは、エジソンは学校にいかなかったけれど、あれだけの発明をやってGEを設立したわけですよ。
飯坂 でも彼は特殊な人だから。
運営者 や、僕はそうは思わないんですよ。教育とはなんだろうと考えたら、学校で教わらなくても勉強はできるだろうと思うんです。
飯坂 でも間違った方向に行かないようにするのが難しいんだよ。こんな話があります。むかし田舎の山奥の青年が数学好きで、ずっとひとりでいろんな計算をして、10年間かかった末に「すごいことを発見した」と思うにいたったそうです。そしてその結果を大学の先生に手紙で知らせてみたら、それは2次方程式の解法だったというんです。
素晴らしいことなんだけど、適切な教育を受けていればそんな無駄な時間を使わずに、もっと先に進めていたはずなのに。だからそういった優れた才能を持った人が徒労に終わる努力をしなくて済むようにするためには、学校に行った方がよいこともあるよね。
運営者 非効率を避けるためにね。でも藤原先生は効率というお言葉はお嫌いだと思いますが。
それに、学校にさえ行けば勉強は終わりなのかというと、それは違いますよね。
飯坂 さすがにそんなことは書いてないと思うけど。ただ学校は聖域だから学校に予算をつけろというのがこの論文ですよ。部外者は口を出すなと。
運営者 身も蓋もない言い方ですが、はっきり言ってそのように読み取れますね。